アースデーの4月22日、米国ニューヨーク市議会は、市が所有やリースの遊び場や公園などで、グリホサートなど化学農薬の使用を禁止する条例を全会一致で可決した。市当局による農薬の使用が有色人種の多い地域に偏っていることが分かっていて、黒人団体などが使用禁止条例の制定を求めていた。この条例案を提案し、成立に尽力してきたベン・カロス議員は、「公園は遊ぶところであって、有害な農薬を撒くところではありません」とコメントし、ジョンソン市議会議長は使用地域の偏在について「環境正義の問題」と指摘したという。ブラシオ市長も法案を支持するという。
条例は、市のすべての機関が害虫駆除や除草について、生物農薬か自然由来の農薬のみを使用すると規定している。また、その対象は、米国環境保護庁(EPA)、カリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)、国際がん研究機関(IARC)が、発がん性や発達毒性があると認め、あるいは疑いがあるとしている農薬がその対象となるという。
条例では、侵略的で有害な種や労働者保護のための限定的な場合について、例外的に化学農薬を使用できるとしていて、条例案の審議で市公園局の副局長は、場合によっては例外使用を求める可能性を示唆していたという。
情報公開による開示情報から、2018年にグリホサートが散布された市内の50の公園のうち42が、歴史的にも黒人が多数を占めるハーレムにあったことが判明しているという。市に情報公開を求めた「ブラック・インスティチュート」は2020年、こうした状況を報告書にまとめて公開している。
この条例制定に尽力してきたベン・カロス議員は、「がんとの関連が指摘されている有害な農薬にさらされているのではないかと心配することなく、都市公園を楽しむことができるはずです。この条例は、子どもたちをより安全にし、私たちの街をより良くするために大いに役立つでしょう。何年にもわたってこの法案を推進してきた支持者に感謝します」と述べている」と述べている。この条例成立に向けて、議会外で運動を展開してきた市民の運動の影響も大きいようだ。
この条例により、公園で遊んだり寛いだりする市民が、危険農薬に曝される懸念がなくなる。それに加え、先にラウンドアップ散布に従事し、がんを発症したとして損害賠償をも求めてバイエルに勝訴したドウェイン・ジョンソンさんのような労働者も、危険な農薬に曝されることがなくなる。
・New York City Council, 2021-4-22 ・Beyond Pesticides, 2021-4-23 ・TAPinto, 2021-4-22 ・Spectrum News, 2021-4-22ニューヨーク州も昨年、州有地でのグリホサート禁止州法が成立した。21年12月31日以降の契約に適用される。全面的な使用禁止が望めない日本でも、こうした自治体レベルでグリホサートなどの公有地での禁止から、少しずつ進めていくことも考えられてよい。
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