米国環境保護庁(EPA)は6月16日、主要な3種類のネオニコ系農薬が、米国の絶滅危惧種の最大79%に重大な影響を与える可能性があるとする最終的な生物学的評価を公表した。今回の影響評価は、米国食品安全センターなどが2013年にネオニコチノイド系農薬の禁止を求めた裁判の和解条件によるもので、米国環境保護庁(EPA)は22年6月を期限として再評価の実施を求められていた。
生物的評価は、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムが米国内の1,700以上の種と800以上の指定重要生息地に及ぼす影響を評価し、以下のように判断している。米国の絶滅危惧種の7割から8割が悪影響を受ける可能性があるとしている。
- 14%の種と17%の重要な生息地に影響を与えない。
- 19%の種と27%の重要な生息地に影響を与える可能性があるが、悪影響を与える可能性はない。
- 67%の種と56%の重要な生息地に悪影響を与える可能性がある。
- 11%の種と10%の重要な生息地に影響を与ない。
- 9%の種と7%の重要な生息地に影響を与える可能性があるが、悪影響を与える可能性はない。
- 79%の種と83%の重要な生息地に悪影響を与える可能性がある。
- 12%の種と11%の重要な生息地に影響を与えない。
- 11%の種と7%の重要な生息地に影響を与える可能性があるが、悪影響を与える可能性はない。
- 77%の種と81%の重要な生息地に悪影響を与える可能性がある。
米国環境保護庁は今回の最終評価を踏まえ、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムについて年間散布量の削減、散布時期の制限、スプレードリフト低減策などの一連のリスク低減策について、2023年に修正暫定決定案(PID)を発表し、2024年に正式に決定というスケジュールを明らかにしている。米国環境保護庁はまた、農薬登録企業と協力して、リストされた種の保護に関する対策を実施するとしている。どのような規制によりリスクを低減しようとしているかはまだ明らかではない。
・EPA, 2022-6-16 ・Center for Food Safety, 2022-6-16 ・Center for Biological Diversity米国の4人の養蜂家と食品安全センター(Center for Food Safety)、農薬行動ネットワーク・北米(Pesticide Action Network)、シエラクラブなどは2013年3月、クロチアニジン21品目とチアメトキサム38品目の登録取消を求めて連邦地裁に提訴した。
米国連邦地裁は2017年5月、米国環境保護庁がネオニコチノイド系農薬の登録手続きが絶滅危惧種保護法に違反していたとして、クロチアニジン21品目とチアメトキサム38品目の承認について原告の訴えを認めた。その上で、まず原告と被告の環境保護庁による和解協議を命じていた。
米国環境保護庁は2019年5月、食品安全センターなどとの訴訟の和解に基づき、バイエルとシンジェンタ、バレント・バイオサイエンス(米国の農薬メーカー)の12品目のチアメトキサムとクロチアニジンの登録を取消した。
今回、米国環境保護庁が絶滅危惧種への幅広い悪影響を認めた、ネオニコチノイド系農薬クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの3種類は、日本でも農薬再評価の14優先品目として21年度から再評価が進められている。しかし、現在までその結果は明らかになっていない。
EUはこの3種類のネオニコチノイド系農薬について、2013年に暫定的に屋外使用を禁止し再評価を進めた結果、2018年12月から正式に屋外使用を禁止している。
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